大師が塩漬けの鯖と大海原で戯れるお寺 徳島県海陽町「鯖大師本坊」(その27 )
別格第四番 鯖大師本坊
(さばだいしほんぼう)
住所 海部郡海陽町浅川字中相15
電話 0884-73-0743
距離 19.7km 標高差 +141m -138m
弘法大師が四国霊場開創の途中、この地が霊地であることを悟り修業を行う。ある朝、大師が通りかかった馬子に積荷の塩鯖を乞うと、馬子は「坊さんとは縁がない」と口汚く罵り断る。大師は「あふ坂や 八坂坂中 鯖ひとつ 大師にくれで 駒ぞ腹病む」と詠むと、馬引坂に至った馬が急に苦しみだし歩けなくなる。この歌を聞いた馬子は先程の僧が大師だったと悟り、すぐに引き返して非礼を詫び鯖を捧げる。大師は再び「あふ坂や 八坂坂中 鯖ひとつ 大師にくれて 駒ぞ腹止む」と詠み、馬子が持ってきた水に加持して馬に与えると、馬はたちまち元気を取り戻す。大師は馬子を連れて一山越えた法生島(ほけじま)まで行き、塩鯖を海に放すと、不思議なことに鯖が生き返って勢いよく泳いでいく。これを見た馬子は仏心を起こし、この地に庵を建てたのが寺の始まりである。鯖のような生ぐさいものを大師が所望した理由について、鯖はもともとは峠の神に捧げられた「サバ(生飯)」であったという。神への供え物が鯖に変わった訳だが、大師と鯖にまつわる話は伝承として永く伝えられ、「鯖を三年間絶って祈念すると願い事がかなう」という「鯖断ち三年祈願」によってお陰を頂いた人もいる。八坂八浜とはこの辺りの地名で、古くより海沿いの難所であったが、今はトンネルが出来て往時の面影はない。鯖大師へは、国道沿いにある福餅で評判の「さばせ大福」を右折するとすぐなので、八十八箇所巡りのお遍路さんが立ち寄ることも多い。寺で販売している手拭いには波乗り大師の絵があり、「空海と塩漬けより生き返りし鯖大海原で戯れるの図」と書かれている。サーファー姿の若き大師が荒波の中イルカのような鯖と遊んでいる姿はとても魅力的。数ある寺社手拭いの中でも傑出した作品だと思う。
御詠歌 かげだにも我名を知れよ一つ松 古今来世をすくひ導く
御本尊 弘法大師
御真言 南無大師遍照金剛