楠の霊木を祀るお寺 愛媛県西条市「生木地蔵」(その70)
別格第十一番札所 生木山 生木地蔵
(いききざん いききじぞう)
電話 0898-68-7371
距離 3.4km 標高差 +4m -175m
寺伝によると、弘法大師が霊場開創のため四国を巡錫の折、四尾山の麓にて仮の夜を過ごした時に山が光り輝き、暁には紫雲がたなびく。山の楠に童子が現れたことから大師は霊感を感得し、「童子の化身を以て我に示し給う」と一刀三礼して霊刀をふるい、一夜のうちに楠の大木に延命地蔵の尊像を刻む。ところが天邪鬼が鶏の鳴き真似をしたため、夜が明けたと思った大師は地蔵の片耳を刻み残したまま立ち去る。このことから地蔵は「耳欠け地蔵」と呼ばれ、耳の病や首から上の病気に霊験あらたかとされる。また青葉の茂る生きた楠に地蔵が刻まれたことから、寺は「生木地蔵」と呼ばれる。樹齢千二百年余と伝わる楠は、昭和二十九年の洞爺台風により根元から倒れる。本堂の横には倒れた楠の霊木が安置されており、その前に小さな楠大明神が祀られている。境内には雨乞いに効験ありと御礼により寄贈された雨乞い石がある。元禄十年(1697)の作とされる。真念の「四国遍路道指南」(1687)には「たんばら町、紫尾八幡、ふもとに大師御作生木の地蔵霊異あげて計がたし」とある。また「四国遍礼名所図会」(1800)には「生木地蔵尊楠の大樹なり、大師自刻し給ふ、今に枝葉茂りある、庵まへにあり、八幡宮山上にあり、下に門有り」とある。寺によると、楠の御霊木は根元より倒れてしまったが、大師自作のお地蔵様は倒れず昔日の姿のまま安泰しているとのこと。生木地蔵菩薩を御本尊とする生木地蔵は正善寺の院外寺院。本寺は同じ丹原町の今井にあり、御本尊は薬師如来である。カーナビに寺名を入れると誤って本寺を示すことがあるので要注意。四尾山は、遠くから見ると平野の中にぽっかりと浮かぶ島のように映る。樹木の種類が多いためかつては国の天然記念物に指定されていたが、相次ぐ台風被害により昭和四十八年に指定解除となったとのこと。内陸ゆえさほどの台風常襲地帯ではないが、地形上風の通り道となるのか。楠が倒れてしまったことと併せ残念なことである。
御詠歌 一夜にて願いを立つるみこころは 幾代かはらぬ楠のみどりば
御本尊 生木地蔵菩薩
御真言 おん かかかびさんまえい そわか