別格第十二番札所 摩尼山 延命寺
(まにざん えんめいじ)
住所 四国中央市土居町土居895
電話 0896-74-2339
距離 26.4km 標高差 +161m -140m
弘法大師が四国巡錫の際、一人の病人が松の木の近くで苦しんでいるのを見て、千枚通の霊符を授ける。その霊験により病の癒えた病人は大師に付き従い、遂に得度を受ける。法忍という僧名を名乗り、この地で千枚通の霊符を継承したという。この千枚通は寺宝として伝わり、今も諸病平癒や安産を願って霊符を求める信者が絶えない。千枚通の霊符を授かった信者は、「南無大師遍照金剛」と書かれた薄い和紙を水に浮かべ、光明真言と「南無大師遍照金剛」の御宝号を七回ずつ唱えた後、願い事を念じこれを飲み干す。すると諸願成就が叶うと言われており、弘法大師の秘法の一つ。病人が休んだ松は「いざり松」と呼ばれる。「いざり」とは足の立たない人の呼称で、現在は用いられないが、お遍路の世界では時々昔話の中で出てくる。この「いざり松」は大師お手植えとも言われ、明治の頃の測定では直径5m、枝張り30mという巨木であったが、昭和四十三年に枯死。今は枯れた幹の一部が境内に保存されている。「いざり松」は御詠歌にもあるように「誓の松」とも呼ばれ、寛政十二年(1800)の「四国遍礼名所図会」には「土居村、大坂講中摂待道の左にあり、誓の松道の左接待店次にあり、銘木、結構なり、天神社松の側にあり」と記されている。境内は道を挟んで二つに分かれ、西側に本堂・大師堂、東側に休憩所がある。寺は第六十四番札所と第六十五番札所との途中にあり、国道からすぐ近くにあるため立ち寄るお遍路さんも多い。寺の入り口に小さな赤い橋があり、小さなお堀のような川を越えて境内へと入る。大師堂は広く、中に納経所があり巡礼用品も売っているが、むしろ納経所の奥にお大師様の参拝所がポツンとあるといった感じ。よって納経所の方がすぐ隣に座っている中、大師像に向かって般若心経を唱える形となるが、人目を気にしなければただそれだけのこと。堂々と般若心経を唱えればよい。色々と巡る大師堂の中でも、記憶に残るお堂の一つである。寺名は今治市にある第五十四番札所と同じなので、間違えないようにしたい。
御詠歌 千代かけて誓の松のほとりこそ なほありがたき法の道かな
御本尊 延命地蔵菩薩
御真言 おん かかかびさんまえい そわか