ロードバイクとスーパーカブで巡る四国八十八霊場と別格二十霊場

ロードバイクとスーパーカブで巡った108の霊場を順次ご紹介します。ブログの前半は寺の歴史と堅い文章が続きますが、後半は寺の見どころやご利益、寺へのアクセスや雑感などを書いてみました。🚲🛵

崇徳上皇の御陵を有するお寺 香川県坂出市「白峯寺」(その99)

第八十一番札所 綾松山  白峯寺

(りょうしょうざん  しろみねじ)

住所 坂出市青海町2635

電話 0877-47−0305

国分寺から白峯寺まで

距離  12.9km 標高差  +312m  -78m

国分寺から白峯寺まで

寺伝によると弘仁六年(815)、白峯山に登った弘法大師が山頂に如意宝珠を埋めて井戸を掘り、衆生済度を祈願する。貞観ニ年(860)、大師の妹の子である智証大師が瑞光に導かれて白峯山に登頂し、地主神である白髪の老翁から御神託を授かる。智証大師は、補陀洛山から流れ着いた光明に輝く霊木で千手観音像を彫造し、これを本尊として佛堂を創建する。保元の乱(1156)に破れ讃岐へ流された崇徳上皇は、都へ帰りたいという思いが叶わぬままこの地で没し、白峰山の稚児嶽上(ちごがたけ)で荼毘に付される。死後、都では天変異変が相次ぎ発生し、人々は上皇の祟りと恐れる。仁安元年(1166)、上皇と親交のあった西行法師が慰霊の為に御廟に参詣する。その際に法師が上皇の霊と歌を詠み交わした話は、上田秋成作「雨月物語」に記されており、中でも西行上皇を慰めた歌「よしや君むかしの玉の床とても  かからむのちは何にかはせむ」は広く知られている。上皇の怒りを恐れる代々の天皇、公卿、武将は御府荘園を寄せて菩提を弔い、種々の霊器宝物を奉納して慰霊の誠を尽す。建久二年(1191)には法華堂が御陵の東に建てられ、応永二十一年(1414)には後小松天皇が法華堂に「頓証寺」の勅額を奉納し、尊崇の意を表する。明治に入ると御陵は寺から宮内省の管轄に移り、明治三年には上知令が出て寺領は境内を残し没収される。崇徳天皇八百年祭に当たる昭和三十九年には、昭和天皇が御陵に勅使を遣わし、式年祭が執り行われている。寺には文化財が多く残され、建造物では十三重石塔ニ基、山門、御成門、勅使門、客殿、勅額門、頓証寺殿、薬師堂、行者堂、阿弥陀堂、本堂、大師堂が、美術品では「頓証寺」の勅額がいずれも国の重要文化財に指定されている。高松藩松平頼重が造営した勅額門と頓証寺殿は装飾、構造共に非常に手が込んでおり、和様を基調とした端正な形式と意匠でまとめらている。天皇、神、仏の三者を一堂で祀る形式は、全国的にも他に類を見ないという。古来より、本尊の千手観世音菩薩は身代わり観音として、白峯大権現(相模坊)は開運招福、商売繁盛、勝負事の神様として、崇徳天皇は悪縁切り、芸事、学問の神様として信仰されている。境内には四国で唯一の天皇墓所である御陵(白峯陵)が隣接し、日本八天狗の一狗である白峯大権現(相模坊)が祀られている。寺には相模坊という天狗にまつわる話が残る。急な来客を受けた和尚の命により豆腐を買いに出かけた小僧は、突然、何者かに背中を押されて空を飛ぶような感覚となる。そして次の瞬間、田舎では見ることない上等な絹豆腐を受け取り、元の場所へと戻る。これは、突然の買い物に走る小僧を気の毒に思った相模坊が小僧を助けたものと今なお語り継がれている。ちなみに、御陵の中で都から離れた場所にあるのは、下関の安徳天皇陵と淡路島の淳仁天皇陵とこの地のみである。また、寺には玉章(たまずさ)の木にまつわる話が伝わる。崇徳上皇がほととぎすの鳴き声に都を偲び、和歌を詠んだところ、ほととぎすはその意を察し、嘴に木の葉を巻いて声を忍び鳴いたといわれる。その巻いた葉が玉章(手紙)に似ているため、ほととぎすの落とし文・玉章と呼ばれ、その葉を懐中すれば必ずよい便りがあると伝わる。現在境内にある木は古の玉章の木を偲んで植樹されたものである。山門を進むと正面に護摩堂、その中に納経所がある。左に曲がり進むと勅額門とその奥に頓証寺殿がある。そこから石段を九十九段登ると本堂と大師堂があり、結構な登りがいである。寺がある五色台は、高松、坂出両市と国分町にまたがる巨大な溶岩台地で、西の白峰に本寺が、東の青峰に次の霊場根来寺がある。五色台とは、密教がいう五つの知恵(法界体性智、大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智)を五体の如来に当てはめた「五智如来」を現すとも言われており、どこか霊場としての雰囲気が全山で漂う。寺は頓証寺殿や白峯陵まで含めると見どころが多く、観光客も多数来訪している。足早に過ぎ去るには惜しい名勝であり、ここは時間をかけて見学するのがお勧め。八十八霊場の中で、皇室・神様・仏様をまとめて勉強できる貴重な場所である。

御詠歌 さむく露白妙の寺のうち 御名をとなうる法のこえごえ

御本尊 千手観音

真言 おん ばさら たらま きりく