第三十二番札所 八葉山 禅師峰寺
(はちようざん ぜんじぶじ)
住所 南国市土市3084
電話 088-865-8430
五台山から禅師峰寺まで
距離 6.2km 標高差 +87m -121m
聖武天皇の勅命を受けた行基が、土佐沖を行き交う船の安全を願い堂宇を建立したのが寺の起源とされる。大同元年(806)にこの地を巡錫した弘法大師は、奇岩・霊石が立ち並ぶ境内が、観音の浄土・仏道の理想の山とされる天竺の補陀落山さながらの霊域であると感得。虚空蔵求聞持法の護摩を修法し、十一面観世音菩薩像を彫造して本尊とする。また大師は、峰山の山容が八葉の蓮台に似ていることから山号を八葉山、求聞持法を修したことから寺名を求聞持院禅師峰寺と定める。禅師とは修行者を意味する。寺は土佐初代藩主山内一豊をはじめとする歴代藩主の帰依をうける。特に参勤交代で浦戸湾から出航する藩主らは、みなでこの寺に立ち寄り航海の無事を祈ったという。本尊は「船魂(ふなだま)観音」と呼ばれ、今も船乗りや漁師から篤い信仰を受ける。寺にある金剛力士像は鎌倉時代の仏師定明の作で、国指定重要文化財に指定。永く仁王門で睨みをきかせていたが、今は庫裏に保管されている。寺は太平洋を望む小高い「峰山」の山頂にある。山名にちなんで地元の人は寺を「みねじ」「みねんじ」と呼んでおり、「禅師峰寺」では通じないこともある。山門から本堂に及ぶ一帯には奇怪な岩山が連なる。その中には、岩のくぼみに溜まった雨水が、潮の満ち引きによって増減するという不思議な岩がある。小ぢんまりとまとまった境内からは、茫洋と広がる太平洋が一望出来る。手前にクルーズ船が停泊する高知新港、その向こうに桂浜の上に立つ国民宿舎が見える。芭蕉の句碑「木がらしに岩吹き尖る杉間かな」は本堂前の奇岩の間にある。寺は県道から少し外れたところにあり、峰山の麓にある集落は砂地の地面にビニールハウスと畑、家屋が混在する海岸特有の風景からなる。道が少し分かりにくいが、畑の老人に「みねじはどこか」と尋ねればすぐに教えてくれる。寺への坂道は急だが、距離が短いためロードバイクなら楽勝。境内からどこまでも続く大海原を見ていると、「よくぞこれほど遠くにまで来たものだ」と感心ひとしおである。
御詠歌 静かなるわがみなものと禅師峰寺 浮かぶ心は法の早船
御本尊 十一面観世音菩薩
御真言 おん まか きゃろにか そわか