ロードバイクとスーパーカブで巡る四国八十八霊場と別格二十霊場

ロードバイクとスーパーカブで巡った108の霊場を順次ご紹介します。ブログの前半は寺の歴史と堅い文章が続きますが、後半は寺の見どころやご利益、寺へのアクセスや雑感などを書いてみました。🚲🛵

橋の下で大師が一夜を明かしたとされるお寺 愛媛県大洲市「十夜ヶ橋 永徳寺」(その51)

別格第八番札所 十夜ヶ橋  永徳寺

(とよがはし  えいとくじ)

住所 大洲市東大洲1808

電話 0893-25-2530

出石寺から十夜ヶ橋まで

距離  21.6km 標高差  +143m  -913m

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金山出石寺から十夜ヶ橋永徳寺まで

四国を巡錫中の弘法大師が菅生山(大寶寺)に向かう途中、この地で日が暮れ夜を迎えるが、村落人家至って少なく、泊まる家が見当たらない。このため小川にかかる土橋の下で一人野宿する。夜が明けるのを待ち願う大師は、一夜が十夜の長さにも感じ、「行き悩む 浮世の人を 渡さずば  一夜も十夜の 橋とおもほゆ」と詠じる。この伝えにより橋は「十夜ヶ橋」と呼ばれるようになり、たもとに大師堂が建立される。寛政十二庚申年(1800)五月吉日九皋主人写とされる「四国遍路名所図会」には「十夜の橋大師此辺にて宿御借り給ひし時、此村の者邪見ニて宿かさず。大師堂橋の側にあり」と記され、十夜ヶ橋の絵が付されている。その絵には小さな川に橋が架かり、手前には小さな祠のような大師堂がある。堂宇の後ろは田んぼか草原で、のどかな田園風景が描かれている。現在の十夜ヶ橋は国道56号にかかるコンクリート橋へと姿を変え、橋上に松山自動車道が交差する。周囲にはショッピングセンターやホームセンター、家電量販店が立ち並び、図会の風景とは隔世の感がある。橋のたもとには御野宿大師像が祀られ、寒さをしのぐための布団が掛けられている。その隣には寝姿の大師像もある。お遍路さんは橋の下に降りて般若心経を唱え、その後駐車場脇の大師堂へと移動する。市街地であるにもかかわらず、小川の水は意外ときれいで大きな鯉がゆったりと泳ぐ。全国には無数の霊場があるが、こうした光景は他に二つとない珍しいものである。橋の下は「修行地」として国内で唯一野宿が公認されている場所であり、納経所では野宿用に「病気平癒身体健康  お加持ふとん」を貸し出している。四国遍路では大師が安眠できるよう「橋の上では杖をつかない」とされているが、この謂れは十夜ヶ橋の伝記に由来する。十夜ヶ橋は永徳寺の飛地境内である。寺の開創は永徳年間(1381〜1384)と言われ、寺名は年号に由来する。享保十二年(1727)に秀意により再建され、現在の本堂は弘化三年(1846)に寛如により建立されるが、老朽化により平成十六年に建て直される。寺は橋から一キロほど南に下った場所にある。橋の欄干には大師の意匠が施されているが、2018年の西日本豪雨ではこの辺りまで川の水が増水し、大師堂も浸水の被害を被る。橋の前には十夜ヶ橋食堂があるが、市街地なので食事処は選択可能。ここからは久万高原へと一気に駈け登るので、しっかりと腹ごしらえをしたい。

御詠歌 行き悩む浮世の人を渡さずば 一夜も十夜の橋とおもほゆ

御本尊 千手観音

真言 おん  まいたれいや  そわか

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