藩主を助けた楫取(かじとり)地蔵のお寺 高知県室戸市「津照寺」(その29)
第二十五番札所 宝珠山 津照寺
(ほうじゅざん しんしょうじ)
電話 0887-23-0025
距離 6.5km 標高差 +5m -147m
室津港を見下ろす小高い山に位置する津照寺は、通称「津寺」と呼ばれる。弘法大師が土佐巡錫の際、山の形が地蔵菩薩が持つ宝珠に似ていることからこの地が霊地であると感得。自ら地蔵菩薩を刻んで本尊とし寺を建立する。平安時代末期に書かれた今昔物語には「津寺」の名称で登場し、「地蔵菩薩火難二値ヒ自ラ堂ヲ出ルヲ語ル」と記されている。寺の本堂が火災に遭った際、本尊地蔵菩薩が僧に姿を変えて村人に知らせ、火難を逃れたという逸話であり、本尊は「火事取り地蔵」と呼ばれる。慶長七年(1602)に初代土佐藩主である山内一豊が室戸沖で暴風雨にあった時、一人の僧が船に現れて舵をとり、室津の港に無事帰港させ立ち去る。信心深い一豊は神仏の加護であろうと津照寺に参ると、本尊の地蔵菩薩がびしょ濡れになっており、僧が地蔵菩薩であったと悟る。このことから本尊は「楫取(かじとり)地蔵」と呼ばれる。寺の紋は山内家と同じ三つ柏で、藩の庇護の下隆盛を極めたが、明治に入ると寺領が没収され廃寺となる。明治十六年に復興が許されるが寺領は大幅に削られ、わずか地蔵堂として残った本堂と寺の庫裏だけとなる。大師堂が昭和三十八年、本堂が昭和五十年に建造される。本堂の屋根には美しく輝く宝珠が据えられているが、堂内で線香を炊くため天井は黒く煤けている。本堂は百二十五段の石段を登ったところにあり、太平洋を一望できる。寺の入り口には土産物屋兼食堂の「遍路の駅夫婦善哉」があり、土地の人が多く立ち寄る。遠洋マグロ基地として栄えた港であり、今もその面影が残されている。スーパーカブで足早に立ち去るには惜しい町で、潮風を感じながらロードバイクでゆったりと散策したい。
御詠歌 法の舟入るか出づるかこの津寺 迷ふ我身をのせてたまへや
御本尊 地蔵菩薩
御真言 おん かかかび さん まえい そわか